なぜ、自分でタネを蒔き、野菜を作るのか。

 予てから社会に対し懸念し続けてきた食システムにおける心配事。例えば農作物の育て方ひとつとっても奥が深い。日本の農薬は世界的にもトップクラス(添加物の危険度も然り)。たとえ無農薬であっても肥料は必要と唱える人は多い。虫は肥料に来る。肥毒の土地で自然栽培を始めた場合、浄化に5年はかかるだろう。有機栽培に許された薬をどう捉えるか。除草剤は本当に無であるか。そして最も大切なこと——タネは、どうなのか。

 タネは命の根源である。このタネを蔑ろにしてはならない。精子の激減、不妊、少子化の原因が実はこのタネにあるという仮説もある。「 種を制するものは、世界を制する 」このせちがらいご時世。今あなたの目の前にあるお皿の上に調理された野菜は、どんなタネで、どのように育てられ、どのような流通を経てそこに在るのか。私見だが、今後世界の農業は農業、農薬、遺伝子組み換えの3部門を中心に進化していくのではないか。権力は食料(種子、水など)に動かされるのではないか。

 遺伝子組み換えや農薬などの他に、無添加を標準にできるか、食品表示をEUレベルにできるかなど真剣に考えてきた。家畜と地球温暖化の関係性、汚染された海水、水の問題、フッ素、発癌甘味料、トランス脂肪酸、電子レンジ、洗剤、電磁波、放射能、予防接種、挙げはじめるとキリがない。これらと真実に向き合い、同じ考えを持つ知己と出会い、この世界をどう変えてゆこうか討論したこともあった。しかしもっと大切なことに気がついた。自分が望む世界の変化に、自分自身がなる、つまり、叫ぶよりもまずは動く、行動する、ということだった。

農薬の危険性を100万回叫ぶよりも、 一本のダイコンをつくり、運び、食べることから始めよう。 (大地を守る会社長・藤田和芳)

 遠い未来を変えるため、目の前の小さな現実を変えていく。革命は、食卓のお皿の上から実現できる。まずは「 タネが危ない 」という講演会を開催した。日本一タネに詳しく、日本一安心安全なタネを売り、日本一未来の日本のことを考えている野口勲氏をお呼びして。そこから一人でも多くの人に、タネの真実を知っていただき、本物の種子を守り続けてほしいと思ったから。そして未来に、その仲間たちが採ったタネの交換会をしようと心に決めていた。

 私は野口種苗店で固定種・在来種のタネを買い、畑に蒔き、野菜を育て、タネを採った。このタネは自家採種である。次からはこのタネを畑に蒔く。それを続けるのだ。米は、最初は農協から種籾を買い、浸水後発芽させて苗を作り、田植えをして育てた。翌年からは自家採種。本当の無肥料無農薬無除草剤なので、いらぬ出費もない。だが、米作りは生半可な管理では育たない。水域、水温、虫、草、自然の法則にしたがい、自然を感じながら、愛を注ぐ。それを怠ると結果は然りである。

 なぜ、自分でタネを蒔き、野菜を作るのか。それは、真実を知れば誰もが到達する結論ではないかと思う。タネの真実、育て方の真実、流通の真実、世界の裏の裏を。これは実感だが、到達すると、沈黙を保つようになる。つまり、完全に理解した者は語らない。もし完全に理解に達したのなら、それらはすべてあまりにも自然なものになる。しかし未だ理解できず、理解に達しようと苦しみもがいている者は、社会毒であれ、愛であれ、自由であれ、それらの言葉に取り憑かれ、それらの言葉を連呼し続けるだろう。それが数年前の自分であった。

 稲作は正直、厳しい。工程は長く、暑い日も寒い日も強風の日も待ったなしだ。それでも私はまた来年タネを蒔く。茶碗一杯のごはんを食べる、その感動のために。家族の命は、自分が選んだものに委ねられているのだから。自家採種自然農法の野菜、果物、豆類、穀類を来訪者にも捧げたい。本物の食とは何か、ローフードの醍醐味を、お伝えしたい。これが私のライフです。

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